読みもの

著者に根ほり葉ほり

INTERVIEW6

『岡山弁トランプ でーれーセット』著者インタビュー
青山融さん(岡山弁協会会長)
インタビュアー:山川隆之(吉備人出版担当者)

岡山弁人気の波に乗って

山川

2016年の暮れに出した『岡山弁トランプ でーれーセット』をこのほど再販売することになりました。お笑いの千鳥、ミュージシャンの藤井風、そしてNHKの朝ドラなど、このところ岡山弁が全国区になっています。吉備人へも「岡山弁トランプはないのですか?」といった岡山弁に関する問い合わせが増えました。青山さんは岡山弁を取り巻くこの状況をどのように思っていますか。

青山

朝ドラで岡山が舞台になって、岡山弁がぎょうさん出てくる楽しみを毎朝味わっています。
岡山弁が全国区になるのはとても嬉しいですね。
千鳥が先鞭をつけてリードしてくれて、なんであんなに人気が出たんならいうくらい人気があって、テレビではしょっちゅう見かけます。
彼らは岡山弁もわざとらしくなく、要所要所で使こうてくりょうりますし、ありがてえなあと思います。
そんな千鳥に引きずられたのか、いま、岡山ゆかりのお笑い芸人がやたら出てきて、空気階段とか見取り図とかね。
惜しむらくは、彼らが岡山弁をあんまり喋っていないということなんですが(笑)。

山川

トランプに岡山弁を、という思いつきはどんなところから?

青山

学生時代から岡山弁を他県の人に教えていたなかで、方言を教えるのは外国語を教えるのと同じではないかとつくづく思ったんです。
他県の人にとっては岡山弁は外国語のようなものだろうと。
ということは、我々が英語を習うときと同様に、文法と単語を主体に教えればわかりやすいはずです。
そこで、まず文法を解説した本『岡山弁会話入門講座』を1986年につくりました。
これで念願がひとつ果たせたので、次はぜひ単語帳をつくりたいという夢をもっていたわけです。
ところが岡山弁の単語帳はすでにほかから出ていて、そのままでは二番煎じになってしまう。
どう差別化をすればいいのかと考えて続けていたところ、アメリカでトランプ大統領が誕生した(笑)。
それで「いまトランプをつくれば売れるかな」と思ったのがきっかけです。

『岡山弁トランプ でーれーセット』著者インタビュー写真1

さまざまな遊び方を提案

山川

狙い通り(?)人気商品になった岡山弁トランプですが、これを使ってどんな遊びをすると盛り上がりますか?

青山

トランプですから七並べやババ抜きにも使えるんですが、たとえばカルタのような楽しみ方もできます。
読み手が「うずないー」と言ったら、取り手が並べてある中から選んで取るわけですが、標準語の「じれったい」と言いながらでないと取れない、といった遊び方です。
実際にイベントでやったところ、たいへん盛り上がりました。
ただ、審判にそれなりの知識と技量が必要という欠点がありますね。

それから、カードを裏向きに重ねて交互にめくり、めくったほうが標準語を読み上げて、相手が同じ意味の岡山弁を答える。
「じれったい」と読んで「うずないー」が答えられれば正解。
正解だったらカードがもらえる。
たくさんカードをとったほうが勝ちというゲームです。

山川

今回再販する『でーれーセット』のあとに、『ぼっけーセット』があるのですが、これもいま品切れになっています。
このふたつの違いは?

青山

両方合わせて重要な100単語というイメージでつくりました。
なかでも最も必須の50単語が赤い『でーれーセット』で、緑の『ぼっけーセット』のほうはちょっとだけ難易度が高くなっています。

ちなみに、強いカードから順に私の好きな単語になっていて、エースやキングには「ちばける」「でーれー」「すばろーしー」といったメジャーなものがある。
ちなみに、ハートやクラブなどのスートによってそれぞれ品詞を分けていて、ハートは形容詞、クラブが名詞、ダイヤが動詞、クラブがその他となっています。
なので、たとえば4つの品詞でカードを分けておいて、1枚ずつ引いて単語をつなげて文章をつくるような遊びもできますね。

『岡山弁トランプ でーれーセット』著者インタビュー写真2

岡山弁の難しさは発音にあり

山川

青山さんはこれまでに映画『でーれーガールズ』をはじめ何作品も岡山弁指導、監修をされてきていますが、県外の役者さんらが、岡山弁を話すとき、どこが難しそうですか。

青山

文法や単語を勉強してもらうのはもちろん大事なんですが、いちばん難しいのはアクセントやイントネーションです。
正しい発音を聞いてみないことには、読むだけではわからないですからね。
ドラマを見ていても、おかしいなと感じるのは必ずイントネーションの部分で、映画で方言指導をしたときも、直すのはぜんぶアクセントやイントネーションでした。

岡山弁のアクセントは、じつは東京と同じなんです。
俳優さんは、関西風の言い回しに引きずられて関西風のアクセントになりがちなんですが、関西風の言葉を東京式のアクセントで発音したら岡山弁になる。
関西と東京の合体が岡山弁なのです。
でも、それをいくら伝えても、なかなかうまくいかないことが多かったです。
ただ、放送中のNHK連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』はとてもアクセントが上手ですね。
今まで見てきた中でもいちばん安心して聞いていられます。

『岡山弁トランプ でーれーセット』著者インタビュー写真3

岡山の魅力を広くPRしたい

山川

青山さんが岡山弁を大切に残していこうと活動されるのは、どのような思いからでしょうか?

青山

岡山の人はPRが下手だとか、謙遜して自慢しないと言われます。
岡山は面白いものや変なところがこんなにいっぱいあるのに、その面白さに地元の人が気がついていない。PRもしない。
それじゃああまりにもったいないと、ずっと思っていたんですね。

私はたまたま岡山弁のことを根掘り葉掘り考えるようになったのですが、岡山弁に限らず、古墳やミステリーなど、自分の好きなジャンルで岡山のことをPRするのが面白くて、趣味として続けています。

山川

岡山弁の替え歌などもたくさんつくられています。

青山

岡山弁で昭和歌謡の名曲を歌うというのも、岡山弁活動の一環でやっています。
もともとはタウン情報誌の編集者時代に、読者が「氷雨」という曲の歌詞を岡山弁に翻訳したものをハガキに書いて送ってきてくれたのが最初です。
それを私がかなり手を入れて、岡山弁の単語がピッタリ入った替え歌の名曲になりました。

これをきっかけに、「神田川」など私の好きな歌をどんどん岡山弁に直すようになり、雑誌への掲載を経て、『岡山弁JAGA!』という単行本にまとめることになりました。
その後、倉敷ケーブルテレビで、つくった替え歌を私が自分で歌うという、とんでもない企画も始まって(笑)。
これは2年間やりましたね。

替え歌の許可をいただくために原曲の作詞家の方に連絡した際には、ほとんどの方から快く了承をいただけ、いろいろなお話ができたのはいい思い出になっています。

山川

トランプについて最後に一言。

青山

「でーれーセット」の増刷ということで、とても喜んでいます。
でーれーの次には「ぼっけーセット」も控えておりますので、この勢いでぜひこちらも再販を(笑)。
それから第3弾の新作として「もんげーセット」も考えているのですが、単語も100個以上となると、なかなか難しくて……、だからフレーズでやってみるなど、いろいろ試行錯誤していますので、また相談に乗ってください。

山川

ぜひ。期待しています。今日はありがとうございました。

岡山弁トランプ〔でーれーセット〕

著者
青山 融
監修
岡山弁協会
仕様
カードサイズ(縦90mm横60mm厚み19mm)トランプ
ページ数
54ページ 2色刷り
定価
本体1300円(+税)
ISBN
978-4-86069-489-0 C0081
岡山弁トランプ〔でーれーセット〕

著者略歴

青山 融(あおやま とおる)

岡山弁協会会長。
1949年岡山県津山市生まれ。東京大学法学部卒。
74年に日本交通公社『旅』編集部に入社。80年にUターンして株式会社アスに入社。
『月刊タウン情報おかやま』編集長、出版企画部長などを経て、02年から雑誌『オセラ』編集長を経て現在は顧問。
趣味は古墳探訪、ミステリ読書、岡山弁研究。
映画『バッテリー』『でーれーガールズ』などの方言指導を担当。
著書に『岡山弁会話入門講座』(アス)『岡山弁JAGA!』『岡山弁JARO?』(アス)、『岡山人じゃが』(共著・吉備人出版)など。
岡山市中区海吉在住。

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