読みもの

著者に根ほり葉ほり

INTERVIEW3

『鳥好きの独り言』刊行インタビュー
小林健三さん(『鳥好きの独り言』著者)
インタビュアー:守安涼(吉備人出版担当者)

探鳥会の参加者へのお礼を込めて

探鳥会の案内役から生まれた一冊

守安

「ほんとまち大賞」に応募しようと思った経緯は。

小林

私は日本野鳥の会岡山県支部が主催する『後楽園第三火曜日探鳥会』で17年ほど案内役を続けてきました。
もういい年齢になりましたし、若い人が育ってきていることもあり、そろそろこの案内役を降りようと考えたとき、これまでの野鳥観察の最後の仕上げに自費出版をしようと思い立ちました。

解説を聞いてくださる人がいないことには、この本に書いたようなことを考えたり思いついたりしなかったはずで、探鳥会の参加者の皆さんには自分を育てていただいたという気持ちがあります。
ですから、これまでの感謝を込めて、案内役を降りるとき皆さんに本が渡せたらいいなと考えて、家族にもぜひ本をつくりたいと相談していました。

野鳥の撮影は、案内のための資料作成にと始めたものです。
探鳥会の挨拶時にお話してきた経験を文章に起こし、撮りためてきた写真とともに一冊の本にまとめていきました。
当初は350ページくらいの分量がありましたが、お手本にしていた本は210ページ程度で、このくらいが手頃なボリュームだと思いました。
そこからお手本を目指して省いていき、結局は171話、212ページにまとまりました。

原稿がまとまったのは2020年の6月くらいです。間もなく「ほんとまち大賞」の募集のことを知って、タイミングがうまく重なったおかげで運良く応募することができました。
2020年末、ちょうど散歩に出かけているときに、大賞に決まったとの連絡をいただきました。思いがけないことでうれしかったですね。

守安

野鳥観察はいつから。

小林

これも本に書いた生い立ちのとおりで、野鳥は幼い頃からずっと身近にあったものです。
はじめて図鑑と双眼鏡を手に入れてちゃんと見るようになったのは22、23歳のころでしょうか。
ですが、その後は結婚や子育てでしばらく忙しくしていたので、本格的に自然観察を始めたのは子どもの手が離れた四十半ばになってからです。

私が案内した『後楽園第三火曜日探鳥会』は、もともとは野鳥の会とは関係なく、純粋に鳥を見たいという御婦人方が何名かで集まってつくられた、40年ほどの歴史がある趣味の集いでした。
その案内役を依頼されて、私で3人目。
前任の方も熱心で、野鳥だけでなく植物などにも明るい方でしたので、そんな方の後任が務まるかなと思いながらも、17年が経ちました。

『鳥好きの独り言』刊行インタビュー写真1

鳥もまた人々を監視している

守安

表紙についてお聞かせください。

小林

本の制作を思いついた折に、最初に決めたことが表紙に使うオオコノハズクの写真と題名でした。

近年ではカメラの性能も良くなって、鳥に関する情報も全国から届く時代になったおかげで、趣味で野鳥の写真を撮る人が急増しています。
しかし、時には野生生物に向き合うマナーが取り沙汰されることも多くなりました。たとえば豊富な野鳥で知られる鳥取県八頭(やず)町のような場所も、いまは人数制限をするなど自由に出入りできなくなっています。

各地で開発が進み、野生生物にとっての環境は年々劣化していますから、思うような鳥を、思うような場所で撮ることが難しくなってきているのです。

この表紙の写真を見る人の視線に合ったオオコノハズクの眼差しには「鳥も人々を監視していますよ」というメッセージを託しています。
思い入れの強い一枚なので、ぜひ表紙に使ってほしいと思いました。

『鳥好きの独り言』刊行インタビュー写真2

道楽ではすまなくなった!?

守安

本が出来上がってみての感想は。

小林

立派な本ができて、出来上がりにはたいへん満足しています。
とくに写真が明るくきれいに調整いただけたのはうれしかったですね。
自分でプリントしてみたものは少し暗い印象で、もう少しなんとかしたいと思っていたのですが、明るさの微妙な調整作業は難しくて、色に悪い影響が出てはいけないと思うと自分ではあまり触れなかった。
ですが、実際に印刷されたものは私の希望どおりに明るくなっていて驚きました。

この原稿をお渡ししたところまでは私の個人的な道楽だったのが、大賞に選んでいただいてからは道楽ではすまなくなりました。
自分が応募したのだけども、選ばれたことで、ちょっと困惑した面もあったんです。
というのも、出版社は仕事として本を作っていますから、出版界のルールや常識にも配慮しなければいけないはずで、私の道楽だけで押し通すわけにはいきません。
きっと出版社の方から「ああしなさい」「こうしなさい」という指示がたくさんあるだろうと思っていたので、どこまでわがままを聞いてもらえるかという心配がありました。

ところが、とくに我慢したという点はありませんでした。
細かい文章の修正などはもちろんたくさんあったのですが、本の表紙やレイアウトなどもこちらの意を汲んでいただきました。
はじめての素人が本の制作に関わって、これだけ自分の思いを受け入れてもらえた本ができるというのは、なかなかないだろうと思います。

もちろん、そのぶん吉備人さんには気をつかっていただいて、たくさん無理を聞いていただいたなと思って、感謝しています。
みなさんに助けられて立派な本にすることができました。
私の人生の記念になります。
どうもありがとうございました。

『鳥好きの独り言』刊行インタビュー写真3

鳥好きの独り言

著者
小林健三 (著・写真)
仕様
A5判変型、並製本、カバー付き
ページ数
212ページ オールカラー
ISBN
978-4-86069-651-1 C0045
鳥好きの独り言

著者略歴

小林健三(こばやし けんぞう)

1948年、神戸市生まれ岡山県育ち。
東京デザイナー学院室内装飾科卒。

1983年木工所起業、リハビリ機器製作に携わる。

趣味は釣り、登山、野鳥などの自然観察。

日本野鳥の会岡山県支部主催の探鳥会において、2003年~2021年案内役を担当する。

資料作成のため、2005年に野鳥撮影を開始。

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