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著者に根ほり葉ほり

INTERVIEW1

『新・岡山の山100選』刊行インタビュー
福田明夫さん(『新・岡山の山100選』編者)
インタビュアー:金澤健吾(吉備人出版担当者)
金澤

この本の初版を刊行して、18年になります。
これまで利用者からどのような使い方をされているか、聞かれていますか。

福田

20年近く経っていますから、山岳会に所属している方はほとんどの方が持っています。
私が聞いている話では、この本に掲載されている100の山を一つひとつ挑戦され、すべて登ろうとされている方も多くおられるそうです。
県南の低い山には低い山の魅力があり、県北の高い山には高い山の魅力があります。
中高年の方が多くて、単独で行っている方、小グループで行っている方などさまざまです。
掲載している100の山にものすごく興味を持って利用いただいているようです。

金澤

県内の山ですから、日帰りで登山ができますよね。

福田

そうです。県北の山でも早く出発すれば日帰りができます。
中には登山をした後、近くに温泉があれば入ったり、美味しいものを食べたり、その地域の特産品などのお土産を買ったりして帰る方もあるようです。

金澤

この本では見開きに一つのルートを紹介しています。
右のページに文章で歩き方を、左ページに地図や交通アクセス、温泉や観光などの情報を詳細に記していますから、出発前に計画をたて周辺の地域の魅力を楽しむ使い方もできますね。

福田

山では、隣県の方や四国の方にも出会うことがあります。
県内の方々だけでなく、県外の方も利用されているようです。特に県外の方は宿を見つけて、1泊している方もいらっしゃると思います。
今回の新版の作成にあたっては、コロナの感染拡大の影響で、営業日や営業時間をどうしようかという施設も多くありました。
温泉や宿泊施設に確認した情報を載せていますが、感染の状況を見ながら事前に電話で確認のうえで、利用してみてください。

写真1

金澤

2年前の西日本豪雨災害で登山ルートを、再踏査をしていただいています。
何人の方で踏査されているのでしょうか。

福田

これまでこの本に掲載しているコースの確認は、73人でしています。
今回は約50人に再踏査をお願いしました。皆さん、岡山県勤労者山岳連盟に所属しているベテランの方々です。
踏査前に「安全第一」の観点でルートを見直してもらうように依頼しました。後から登ってくる人が安全に登れるようにという気持ちで、ルートの点検をしていただいたと思います。
山は2、3年したら草や雑木が茂りますから、山岳会の方は山に登ったら歩行を妨げる枝を切ったり、コースの目印する色テープを張り替えたりするなど、普段からコースの整備をしています。

金澤

豪雨災害後、かなり山が荒れていると、うかがっていました。

福田

土砂崩れや倒木などがかなりあったので、踏査した方に迂回するルートをつくっていただいたコースもありました。
今回の再踏査で大きく傷んだ山を外して新しい山を加えて入れ替えたコースが4つあります。
そのほか、ルートを少し変更したコースが約40あります。
危険箇所には、こっちに行ったら危険という表示を地図にも入れました。
県内の各地域に山岳会や地元の山を愛する会などがあって、山が崩れているなどの情報を踏査前に聞いていました。
傷んだ道を地元の方々が道を整備してくださったケースもありました。
県内にあるそれぞれの山岳会メンバーなど、多くの方の協力をいただいています。

写真2

金澤

県内の登山愛好者のネットワークがあって、皆さんの協力が今回の改訂版に反映されているわけですね。
取りまとめて編集をしていただいた福田さん自身のご苦労もあったのでは――。

福田

私自身も踏査いただいた方の原稿を持って、現地を確認のために歩きました。
読者からの問い合わせがあったときに、自分の目で現場を見ておく必要がありますし、現場を知らずに取りまとめはできませんから。

金澤

福田さんをはじめ、県内のベテラン登山家の方々が、これから岡山の山を登ろうという人のために力を結集していただいたわけですね。
3年前の豪雨災害後、安全を確保するための最新情報が盛り込まれた本になったと言えます。
一般の方に、この本をどんな使い方をしてほしいですか。

福田

これから山登りを始めようという方には、この本はもってこいだと思います。
登山口からルートのたどり方を明確に書いています。例えば曲がるポイントや分岐した道の進み方など細かく書いているうえ、ポイントに番号を入れて地形図や断面図と対応させています。
それぞれのポイントの間の移動時間や距離を記して書いていますから、登山プランをたてるのにも使いやすいと思います。
自信を持ってお勧めできる本です。

金澤

各コースに「家族向け」「一般向け」「健脚向け」「熟達向け」の表示をしていますね。

福田

初心者の方は「家族向け」のコースから選んでほしいと思います。
特に「熟達者向け」の山は岩場があったり藪こぎがあったり険しい山です。
こういう山は体力や経験のある方でないと入ってはいけません。道に迷ったり足を踏み外したりすると命にかかわります。
ですから、低山から経験を積んで、少しずつ上のランクの山に挑戦してほしいですね。

金澤

一般的に安全に登山を楽しむために、気をつけておくことがありますか。

福田

安全な登山は、最も大切なことです。
この本でも最初にも「ご利用にあたって」「登山の心得、諸注意」として基本的なことを書いていますので、必ず読んでおいてください。
これから登山を始めようという方なら、まずは地元の山岳会などに入会して、しっかりした知識を身に着けたうえで山に行くことをお勧めします。
「一般向け」以上の山は単独ではなく、登山の装備をして経験者と一緒に登ってください。

金澤

自然を甘く見ないということですね。

福田

麓と山頂の近くでは環境も違いますし、天候が急変することがあります。
それに、登山で注意したいのはケガもそうですが、道迷いです。低山ほど道迷いをしやすいといえます。
地図の見方を学んでおくことが大切です。そのためには、山の先輩と一緒に登りって経験を積むことですね。

金澤

近くにある低い山から始めるということですね。

福田

低山は、健康づくりのために登られる方が多いです。
この本には、季節ごとの楽しみ方や山の名前の由来、歩行のアドバイスなども書いていますから、山の自然をたくさんの方に楽しんでもらいたいですね。

写真3

金澤

福田さんの登山に対する思いをお聞かせください。

福田

登山は、自然の中で楽しみながら四季を感じて、体を鍛えて心もリフレッシュできます。
この本で紹介している山の自然はすべて違いますから、100通りの楽しみがあります。
頂上の見晴らしが素晴らしい山ばかりではありませんが、道中の自然環境が楽しめるなど、それぞれの山に魅力があります。
新しくなった『新・岡山の山100選』で、100の名山を楽しんでいただきたいものです。

新 岡山の山100選

著者
福田 明夫(編),守屋 益男(監修),岡山県勤労者山岳連盟有志(著)
仕様
B5変,並製本
ページ数
221ページ
ISBN
978-4-86069-645-0 C0075
新 岡山の山100選

編者略歴

福田明夫

1942年、総社市生まれ。
日本勤労者山岳連盟、岡山県勤労者山岳連盟、山陽カルチャーマウンテンクラブへ所属。
キャンプインストラクター。

42歳から登山を始め、『岡山の山百選』、『中四国・兵庫の山百選』『日本百名山』『日本二百名山』『日本三百名山』の山すべてに登頂。
積雪期テント泊で縦走「大雪山~トムラウシ、白馬岳~唐松岳~五滝岳~鹿島槍ヶ岳」「十勝岳、羅臼岳、利尻岳、羊蹄山、八甲田山、岩木山、月山、立山、穂高岳」などへ登頂。
海外ではマウナ・ケア山(4200m)へ登る。

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