書籍紹介

蚕のおくりもの

著者 小田 由紀子 (作) 佐藤 定 (絵)
発行吉備人出版
仕様 B5判 上製本
ページ数 53ページ
価格本体1,429円+税
ISBN978-4-906577-68-7  C8793
初版年月日2000年11月30日
書店発売日2000年11月30日
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糸くずのような小さな命、でもゴミと一緒に捨てるなんてできないよ!
オダさんちにやってきた小さな蚕が巻き起こす大騒動。
「桑の葉っぱはどこにある」「できた繭はどうするの?」 …一匹いっぴきの蚕を守ろうした幼い兄弟の願いが、たくさんの大人たちの心を揺り動かした。
命を助けてもらった蚕たちが二人に贈ったプレゼントとは。

テレビや新聞でも取り上げられた岡山市内のある一家の蚕騒動が、すてきな一冊の絵本になりました。
二人の兄弟を温かく見守った母親が物語を書き、おじいちゃんがすてきな絵を添えてくれたのです。

2018年、林芙美子文学賞受賞の作家・小暮夕紀子が2000年に小田由紀子の名前で出したデビュー作品。
絵は作者の父、画家・佐藤 定。

 

佐藤定氏あいさつから

(前略)さて、明くんと真ちゃんは、学校で昆虫博士と言われるほどの生き物好き兄弟でした。
二人の博士は、大勢の人々に支えられながらも、激突と和解を目まぐるしく繰り返しつつ頑張ってがんばって掛け替えのない体験をします。

1.蚕を飼うなかで人間以外の生命にジカに触れ沢山お話をしました。
2. 二人の成長のためならと、青い畳の部屋を惜しげもなく解放してくれた父母の 深い思いやりを実感し、
3.力が尽きそうな時に、駆けつけてくれた友達や、多くの大人たちの暖かさを全身で感じました。こうして二人は大仕事をやりとげ、そのなかで、[本物のやさしさ]を身につけてくれた訳です。

明宣くんと真ちゃんと、その仲間たちは、学校の場合とは違い『自分でヤッタ』…具体的に実践・体験したのです。
一方、子供達を包んだ大人達も、輝く子育て家でした。
『命の貴さ』という言葉は一度も口にせず黙々と働き、子供達がそれを体得するのを、ひたすら支えたのでした。(中略)

さて皆さん、いま振り返ってみると蚕を巡る一大騒動は、有形なもの無形なものを沢山残してくれました。
今日お披露目している絵本『蚕のおくりもの』もその一つです。
しかしこの絵本は、単に、蚕を飼う二人の子供がいて、その奮闘ぶりを綴るママさん作家がいて、画家のジイちゃんがいて、できたものではありません。
明くん真ちゃんの回りには[命を大切にする子供]の一団が出来、次いで、これをバックアップする大人の連帯の輪が出来ました。
このことが感動的です。
昨今の世相にあるまじき眩しさです。
この絵本は、その眩しさの副次的産物です。
まさに大勢の人々が結集した[人間本性に基づく共同]の産物です。
そうした意味から僕は蚕に拘わった全ての人々に心からの尊敬と感謝を捧げます。
みなさん感動をありがとうございました。

そして『蚕のおくりもの』を手にして愛読してくださる方々は、人が人である喜びをほのぼの感じて下さるであろうし、私たちと同じ思いを共有してくださると信じます。
一見、荒廃して、衰退して、行方が分からなくなるような人の世に、心のキズナの確かな拡がりを感じます。
この後しばらくの歳月を挟んでのことでしょうが[小田由紀子・佐藤定のコンビ]がもし再び出来ましたら、またお会いください。

著者プロフィール

小田 由紀子

1960年、岡山県生まれ。岡山大学法文学部卒業。

出版社編集記者、フリーライターとして生活のあらゆるテーマについて取材・執筆を行ってきた。

1999年度岡山市市民の童話賞受賞。
第14回グリム童話賞受賞、2018年「暮れる」で第4回
林芙美子文学賞大賞受賞。
同受賞作を改題した「タイガー理髪店心中」が『小説トリッパー』(朝日新聞出版)誌に掲載され小説家デビュー。
掲載に際して筆名を小暮夕紀子に改め、エッセー、小説など『小説トリッパ―』『文学界』『群像』などに発表。
単行本『タイガー理髪店心中』は2020年1月朝日出版社より単行本として発刊。

佐藤 定

1935年、岡山県生まれ。
岡山大学教育学部卒業。
洋画家。
行動美術協会会員。

絵本、挿絵では『日本の昔話』(日本放送出版協会)、『岡山のむかしばなし』(山陽 新聞社)、『砂鉄の村の民話』(手帳舎)などがある。

1967年に初個展から計81回の個展を開く。

作品集『ドテラの中―佐藤 定 個展案内状集 1967~2016』(2018年ふくろう出版)。

2018年没

※上記内容は本書刊行時のものです。

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