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その映画に墓はない  ― 松田優作、金子正次、内田裕也、そして北野武 ―




著/世良利和 著
●定価1,600円(本体価格1,524円+税)
●四六判、306頁
●ISBN4-906577-54-7
●2000年7月初版発行

 松田優作、内田裕也、金子正次、北野武。邦画を語るうえで欠くことのできない個性派俳優・監督を、ハードに論じた渾身の映画評論集!


著者紹介 世良 利和(せら としかず)
1957年、島根県大社町生まれ。大学講師、コピーライターを経て、現在ソフト販売会社勤務。岡山市在住。主な映画評論に、『嘆きの天使とその周辺』『ドイツ映画ノート』『デビッド・リンチの距離』『ブルース・リーの閃光』などがある。


本書より抜粋
はじめに
 ここに取り上げた四人は、いずれも個人的に思い入れの深い俳優や監督たちばかりだ。高校時代から憧れ続けた松田優作の作品は、いろいろな場面 がその時々の自分と分かちがたく結びついており、決して色あせることがない。金子正次の映画と出会って胸を衝かれたのは、風呂もトイレも流しもなく、陽も差さない家賃数千円の部屋で暮らしている頃だった。八〇年代に入って快演を連発する内田裕也に興奮したのもほぼ同じ時期にあたる。監督としての北野武は他の三人から遅れて登場してきたが、こうして今も彼の作品世界をリアルタイムで体験できるのは幸せなことだと思う。
 本書をまとめるきっかけとなったのは、『映画芸術』の依頼に応じて書いた「松田優作はどこからやって来たのか?」という短い論考だった。これを出発点として、いつかは取り組もうと思いながら十年近く放置していた松田優作論を書き上げることができた。その勢いを借りて、以前に書いていた金子正次と内田裕也についての文章を手に入れながら大幅に加筆し、さらに北野武論を新たに書き下ろした。
 ところでこの4人は交友関係の連鎖を成していたり、相互に影響を与え合ったりしている。あるいは「暴力」という共通 のテーマでそれぞれの個性を照らし出すこともできそうだが、そうした観点からこの四人をあらかじめ意図的に選んだわけではない。映画をめぐる孤独と自由という、私にとってどうしても譲ることのできない作品評価の基準が彼らを選び、批評という行為の中でその孤独と自由の手触りをもう一度確かめるように求めた結果 なのだと思う。
 最後になったが、本書への写真掲載を快く承諾していただいたオフィス北野、日活株式会社と金子朋子さん、〜に、この場を借りてお礼を申し上げたい。

目次
その映画に墓はない―松田優作論
 遅れてきた男/遊戯という名の挑戦/スタイルの完成とその解体/個性の新たな展開/監督から再び俳優、そしてアクションへ

金子正次の残像
 「竜二」はいつだって戻ってくるぜ/裏切られた「チ・ン・ピ・ラ」/「ちょうちん」の魅力と限界/ニュー・ヤクザ路線の盛衰/獅子王よ、お前はどこにいた?/「チンピラ」再び/そして「盆踊り」だけが残った

内田裕也、道化の季節
 オレのまわりはピエロばかり/閉ざされた日常のハードボイルド/リメイクの季節

孤独な夢の軌跡―北野武覚書
 プリミティブな凶暴性/トイレの闇に咲くパラダイス/誰もいない海/限りなく夢に近いブルー/その映画、最低につき/閉ざされた時間と場所/他者という悲しみ/少年たちの夏休み/北野武の孤独

映画詳細データ
 松田優作主演の全映画データ/金子正次脚本の全映画データ
 内田裕也主演の全映画データ/北野武監督の全映画データ